イサン語解説

イサン語開発の経緯

 「製造業の多くがそうであるように、NAPPYの勤める会社でもイサン(東北地方)からの従業員がかなりの割合を占めています。「80名ほどの従業員中ざっと7割がイサン出身。ですので、うちの会社の「標準語」は「イサン語!」というほど、密度が濃い状態で、地元アユタヤ出身の社員は入社するとイサン語を一生懸命習得する、という有様。」(バンコクヨーキー日より抜粋記)
タイ東北地方は「イサーン」とよばれ、貧困の代名詞となっています。家族 を含めると同地方の人口の7割が農業に従事しているといわれていますが、 雨水だよりの農業で、しかも土地がやせているため現金収入が少なく、都会 に出稼ぎに出る人も少なくありません。 バンコク都で働いている人は、給与の半分は実家に仕送りしている人がほとんどです。タイ総人口の3割強がイサン人と言われています。
 こうしたイサン人とコミュニケーションをとるのには標準語だけではで足りません。彼らの会話を少しは分かるというぐらいに学んでおくと、イサン人ともっとうまくやっていけるかもしれません。
イサン出身者は下層階級とみなされているため被害者意識があり、ひがみっぽい側面もあります。彼らは、タイ人と接するときはタイ語ですが、同じイサン人同士ではイサン語です。イサン人と接する機会の多い人は、イサン語を少しだけでも話してみましょう。ただ、イサン出身だといっても、若い人のなかにはイサン語を話さない人も多く見受けられます。
イサン語は方言だといわれていますが、その理由は正字法がないからです。イサン人はイサン語で手紙を書くことはありません。文書はタイ語です。学校では標準語(タイ中央語)で教えています。イサン語はどちらかというと、カンボジア語、ラオス語との共通性が高く、ラオス語、カンボジア語からの派生言語だと考えられます。今日では、タイ語の単語が半数ぐらいが使用されています。こうした意味では、方言というよりピジン語として成り立ってきたと言えます。今後、どんどん変節していくことでしょう。地政学的には、この地方はクメール王が支配していた時代があり、こうしたことから文化は独自性が濃厚に残っています。また、彼らが自分たちの言語はタイ語とは違うという意識は消えていません。全編イサン語の映画「15語」では、タイ標準語の字幕がついています。そういう意味では、タイが単一言語であるとはとても言えません。それは、タイ中央部の人はほとんどイサン語を解しないばかりか、学ぼうともしていないからです。タイ人に人気の言語は英語、中国語、その次に日本語です。日本人が、なんでイサン語に興味をもつのか中央タイ人は理解できないでしょう。しかし、実態として労働者の大半はイサン人なのです。建築現場、タクシーやモーターサイの運転手、マッサージ、製造業、レストランのホステス、ビル清掃、家政婦、サービスアパートやホテルの清掃婦、警備員、カラオケ嬢など、これらの職種の大半は出稼ぎに来たイサン人です。(写真はチャイヤプーム県の高校生のฟ้อนรำです。)

イサン地方とは

 赤く色付けされたところがイサン地方です。

この地域の住民の多くはラオス語に非常に近い言葉(イーサーン語とも呼ばれる)を母語とする人々であり、主に南イーサーンに住み、高地クメール語(カンボジアの公用語とは微妙に異なる)を話すクメール系住民がそれに続く。ただし、タイの他地域と同様、公教育はすべてタイ語(国語)で行われる。

文化的に中央部とは異なる。モーラムと呼ばれる独特の歌謡曲を持つほか、ナコンラーチャシーマー、ブリラム、スリン、シーサケットなどを除くイーサーンの大部分では、ぱさぱさとしたいわゆるタイ米を主食とせず、インディカ米のもち米を主食とする。広く知られるイーサーン料理としては、ラープ、ソムタム、ガイヤーンなどがあり、ソムタムに用いられるプラーデック(醗酵魚)やプードーン(醗酵沢蟹)もイーサーンの調味料として有名である。

イーサーンの人口はタイ王国総人口の約三分の一を占める。地域の主な生業たる稲作の大部分は不安定な降水に依存する天水田で行われており、その収量は低くかつ不安定で、イーサーンはタイでも最も貧困な地区とされてきた。加えて言葉遣いもタイ標準語とは若干異なることから、中央のタイ人によっていまだに差別(侮蔑)の対象とされることも珍しくない。

タイ政府によるイーサーン振興政策は遅くとも1910年代から行われていたことがタイ公文書館に保存された多数の文書から確認できる。インドシナ戦争が同地域における開発援助をさらに加速したとも言われる。それに加え共産主義運動が下火になったこともあり、徐々にイーサーンの人々はタイ王国の枠組みに組み込まれていった。現在では一部に民族意識は残るも、基本的にはほぼ同化している。(Wikipedia イーサーンより抜粋)


イサン語の特徴(詳しくは「PDICイサンの声調と発音解説」に)

 イサン語は、地方によって1つではなく、大きく別けて3種類あるといわれています。今回、辞書を作成した発音はノンカーイ出身者から収拾しました。
イサン語の特徴を書くにあたって、PDICイサン語の発音はコンケン、ウドンタニ、ノンカイなどで話される言葉です。

  1. ロールワがなく、 ローリンになるか、になる。(R音がなく、L音のみ)
  2. チョーチャーンがなく、 ソーソーになる。(cha音がなく、s音になる)
  3. のL音が省略されることが多い。(タイ語ーkhrapはkhlapとなり、省略されてkhapと発音される)
  4. を ヤ のほかに ɲ ニャ と発音する単語がある。(タイ語にはない頭子音である。中央語のタイ人は発音ができない。)
  5. 声調記号でマイトーはほとんど使わない。
  6. タイ語のマイトーはマイエークに置き換えられるので、単語によっては高声(タイ語)が下声になる。
  7. 高声にはマイジャッタワーを使う。
  8. タイ語の平声のように中間から真っ直ぐ発音される声調がない。

タイ語と違う発声

   Tonal Chart  ตารางการออกเสียงของภาษากลาง  
  Thai ไทย タイ   ヘイ音節オンセツ คำเป็น ソク音節オンセツ คำตาย 
       基本  อ่ マイエーク  อ้ マイトー  อ๊ マイトリー  อ๋マイチャッタワー  長母音ボイン  短母音タンボイン
        A  B  C
 1  ขฉฐถผฝศษสห コウルイ ǎ  à  â  -  -  à
 2  กจฏฎดตบปอ チュウ類字タグイジ a  à  â  á    à
 3  คงชซณญทธนพฟภมยรลวฮฒฬ テイルイ a  â  á  -  -  â á
  1. A3の発音は、真ん中低目から上昇してから下がるような抑揚がある。タイ語の長母音の下声を高低の幅を低くしたイメージ。タイ語の平声として表現できないので、新しい記号を用いる。日本語では、「ぃやい、ぃやい」と速く言うときのニュアンスが似ている。
  2. A2は真ん中低めからでて、やや尻上がりになるので、タイ語の平声と区別して、これも新しい記号を用いる。
   Tonal Chart  ตารางการออกเสียงของภาษากลาง    
  ISAN   ヘイ音節オンセツ คำเป็น ソク音節オンセツ คำตาย  ตัวสะกด เช่น 
       基本  อ่ マイエーク  อ้ マイトー  อ๊ マイトリー  อ๋マイチャッタワー  長母音ボイン  短母音タンボイン  กะ.ขะ.ตะ
        A  B  C  H
 1  ขฉฐถผฝศษสห コウルイ ǎ  à  â  á  - à ǎ à
 2  กจฏฎดตบปอ チュウ類字タグイジ ā  à  â  á  ǎ à ǎ à
 3  คงชซณญทธนพฟภมยรลวฮฒฬ テイルイ ȃ  â  -  á  ǎ ȃ ȃ ȃ